良質節約生活 100万円/1年

50代、精神疾患持ちのシニア主婦ブログ。

銀行の住宅ローンが怖い。年収の10倍の借金ができてしまう恐怖

 私と同じく精神病を患う洋子。彼女の病状も一進一退で、働けるときは週3~4回1日4~5時間のアルバイトに出ていましたが、最近は更年期障害のような症状も出て、また働けなくなってしまっています。

 

 洋子は結婚しているのですが、夫は高卒で給料は300万円台。手取り18万円強で夏と冬にボーナスが30万円程度(だったかな?間違ってたらごめんなさい。)出るそうです。

 

 洋子は地方の小さな町から仕事を求めて関東に引っ越してきた根っからの田舎者。そして、親も地方の片田舎で小さな賃貸暮らしで一生を終えた質素な生活の家系。ピアノやバレエにあこがれるようなどこにでもいる女の子でしたが、片親で家が貧しく、ピアノを習うことなんて夢のまた夢で、貧乏な親に気を使って「ピアノを弾いてみたい。」と、口にすることすらできなかったそうです。

 

 それとは逆に、夫の武はそこそこの規模の会社のそこそこの地位の父親と、定年まで銀行の窓口の仕事を続けた母親の元で育ちました。武は子供の頃からピアノ、スケート、水泳、習字など、さまざまな習い事をさせてもらい、中学、高校もテニスに夢中で、スポーツ推薦で進学したほどでした。しかも、中学、高校と私立。

 

 洋子と武の生活観は全く違っていました。

 

 持ち物に高価なものはほとんどなく、しかも持ち物自体が少ないのが洋子です。一人暮らしの部屋に遊びに行った際には、2Kの風呂なしの部屋に、三段ボックスを横に寝かした上にテレビが置いてあるのと、台所に冷蔵庫がある以外は何も部屋にありませんでした。押し入れが1間半あり、その中に荷物のほとんどが入るので表に荷物が出ないとのことでした。洗濯物を干すためのヒモが張ってあるのが印象的な部屋でした。

 

 逆に収入が多くないのに高価なものを欲しがるのが武でした。洋子と暮らすために2LDKのマンションに引っ越してきた際も、洋子が収納家具や台所用品や布団を持ってきたのに対して、武は全自動の麻雀卓やスノーボード、テニス用品などを持ってきて、あの時は武の生活感のなさにちょっとおどろいたと洋子は言っていました。

 

 武は「格好の良い(持ち)家と車と犬、そして子供」を持つのが夢です。ですが、洋子は一人暮らしが長かったこともあり現実的です。年収300万円台で、しかも自分が病気で働けない状態で、それらを手に入れることは不可能だと分かっていました。武は自分の両親がしていたような家も車も収入もある生活になるのが当たり前、自分の父親がそうだったように年を追うごとに年収や地位は上がっていくもの、自分もきっとそうなるだろうと、漠然と刷り込まれていました。洋子は、高卒で仕事から帰ったら寝るまでアニメを見ている夫の収入や地位が上がるとは到底思えず、その感覚のズレで、もやもやしていました。

 

 さらに悪いことに、夫は職が長く続いたことがなく、現在の会社もまだ3年目。そのうえ、過去にキャッシングで借りたお金を踏み倒して強制解約されたという過去をもち信用情報機関のブラックリストに載っていることは間違いない人物。実際に審査が甘いことで有名なクレジットカードに申し込んだところ、審査に落ちたとのこと。(審査に落ちたのは5年以上前なので履歴は消えているかもな状態。)

 

 洋子は夫が夢見ているもの全てが手に入らないであろう現実が、あまりに不憫で、さらに自分が病気で経済的に足をひっぱっているという後ろめたさもあり、駅前のタワーマンションのモデルルームを見に行こうと夫を誘いました。おしゃれで都会的なマンションの内装を見ることで少しだけ夫に夢を見させてあげようと思ったのです。ブラックリスターだし、勤続3年だし、年収300万円台だし、買えるわけはないと、全くの冷やかしで遊びに行ったのです。

 

 モデルルームに行くと、お茶や茶菓子が頻繁に出てきて、5~6時間拘束されて、日常会話を織り交ぜながら、夫婦の経済状態や、夫の勤務状態などの聞き取りをされたそう。冷やかしで来たつもりだったのに、上記の夫の年収や勤務状態を話しても営業が帰してくれない、おかしいな、と洋子はすこし不安になりました。

 

 逆に武は夢のマイホーム、しかも駅前のタワーマンションということでテンションが上がって、営業マンに言われるままに次回に必要な書類の説明を受けて次回の予約を取り付けて帰りました。

 

 そして、必要書類を提出して審査を待っていた洋子と武ですが、「まあ、審査には落ちるだろうね。クレジットカードの審査にも落ちたくらいだから。あはははは。」と、本当に軽く考えていたそうです。

 

 ですが、経済的には悪条件のそろったこの夫婦が、なんと住宅ローンの審査に通ってしまったのです。二人とも、まさか審査に通るととは思っていなかったので、急に恐ろしくなってしまいました。

 

 というのも、2LDKのそのタワーマンションの価格は4300万円。

 

 洋子の独身時代の貯金で諸費用と頭金500万円ほど提供するという前提でしたが、住宅ローンで借りられる金額の相場は年収の5倍程度と言われているのに、この場合は10倍以上です。洋子が言うには「たまたま、提出した所得証明が残業が多かった年で405万円みたいな感じで、400万円をギリ超えていた。」こともちょっと関係するのではないかとのこと。営業マンにも、当初「300万円台と400万円を1円でも超えているのでは全然違うから、そこら辺をはっきり知りたい。」と急かされたそう。

 

 月収18万円強なのに、返済額が毎月12万弱という試算が出て、マイホームが買えるとはしゃぐ夫を見て、洋子はノイローゼ気味になったそうです。

 

 洋子は精神病を患っていて、その頃あまり調子がかんばしくなかったので、うまく色んなことを考えることができませんでした。そうこうしているうちに武が重要説明事項を聞きに行き、あとは契約のはんこを押すだけ、というところまで来てしまいました。

 

 洋子は4300万円という数字の重さに寝込んでいたのですが、意を決して、夫に話しました。

 

「私は今のアパート生活でも充分に幸せだよ。4300万円なんて、とうてい払えるとは思えないの。18万円の給料から12万円のローンって考えただけで、耐えられない。今回は諦めよう。私が働けるくらい元気になってから考えよう。」

 

二人はマンション購入を諦めました。武が契約解除の手続きに行ったとき、

「重要事項説明を受けた後に契約解除する人は本当にめずらしいですよ。」

と営業マンに言われたそう。

 

年収の10倍以上の借金。あなたはうれしいと思いますか?怖いと思いますか?