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親の悪口をいいながら親にしがみつく大人達について

 

 

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 私も夫も、いわゆる「毒親」育ちです。毒親とは、一般的に「子どもの毒になる親」のことで、明確な定義はありません。過干渉や過保護、過度な支配・管理、価値観の押し付けなどによって子どもに悪い影響を及ぼす親のことを毒親と呼びます。

毒親から逃げ出す人、毒親にしがみつく人

 私も私の夫も毒親育ちです。私の親は分かりやすく虐待する毒親だったので、そのおかげで子供の頃から反発心や自立心がはぐくまれていきました。

 逆に夫の親は過干渉な毒親で、子供から自分で考えたり、自分で行動を起こしたりする力を奪うタイプの毒親でした。

 私も夫も、自分の親は何かおかしいと、親の家を出て独立したタイプです。夫は一度は家を出るものの、経済的自立がむつかしく、親を責めながら親にしがみつくという典型的な「毒親にしがみつく大人」をやっていた時期もあります。

 ですが、私と出会い、一緒に暮らし始めたことで「親にしがみつく」のをやめたのでした。彼が、親への「しがみつき」をやめたのは26歳の時のことでした。親へのしがみつき癖があった夫は、今度は私にしがみつこうとしました。ですが、しがみつきを許さない私の再教育によって、夫はいかに自分の考え方や行動パターンが歪んでいたかに気づき、少しずつですが行動や考え方を変化させていきました。

過干渉毒親の子の特徴

 毒親にも色々なタイプがあります。私の家のように貧乏で子に依存するタイプの毒親、夫の家のように、成人した子供に住環境を提供し、小遣いを渡し、家事炊事をやらせない、つまり、自立を妨げる過干渉(甘やかし)な毒親など、様々です。

 毒親育ち、特に過干渉型の毒親持ちの子達は、親の経済力があることが多く、いつまでも親の経済力に依存することができます。ですから、ずっと親の悪口を言いながら、その親にしがみついています。私はこのような人達をたくさん見てきました。

 こういった人達は、みな、自分は特別に不幸だ、あるいは自分の家庭は特別おかしい、自分の親は特別おかしいと思っています。ですが、そのようなケースをたくさん知っている私としては、あなたの家はどこにでもある普通の機能不全家族で、親離れ子離れのできない典型的な共依存家庭だよ…と心の中で思っています。

 自分を特別視したいのは、機能不全家族を持つ子供にある典型的な特徴です。また、そういった機能不全家族出身で、親の経済力にしがみついている子供のほとんどは、「自分が自立できないのは、親のせいだ。」と言います。「親が自分を自立できないように育てたから、自分は自立できないのだ。」と、皆、口を揃えて言うのです。30歳になろうが、40歳になろうが、親のせいだというのです。

自立より毒親を選ぶ子達

 以前、ある記事で人は各々に各々の苦しみを持っていて、苦しみを持たない人などいないと書きました。

 私のように、親が子を虐待し、家は貧困で、何なら親が子のお金を盗むというような家庭出身の子供は親にしがみつくメリットがありません。ですから、親からの逃亡と自立という「苦しみの選択肢」しか与えらていませんでした。

 ですが、経済力のある毒親の元で育った人間には3つの「苦しみの選択肢」があります。

  • 親の経済力にしがみつき、親の支配下に下る苦しみ
  • 親にしがみつくか自立するか迷い続ける苦しみ
  • 経済的・精神的に自立・自活する苦しみ

 経済力のある毒親の元で育った人達は、みな、これらのうちのどれかの苦しみを選び、感じながら生きています。

 私は、何人もの人に「親が毒親で苦しい。」という話を聞かされましたが、自立する苦しみを選んだ人は5年かかろうが、10年かかろうが、親からの自立を目指します。逆に、親にしがみつくことを選んだ人達は、「親のせいでこうなった」と繰り返し、「私の苦しみは誰にも理解されない。」と、皆、口をそろえていうのです。

 私も、若い頃はこういった人達に親身になり、「親と一緒にいるのがそんなに苦しいなら、家を出たら?」とやんわり説得していましたが、こういったタイプの人達は、いくら周りが説得しても家を出ようとせず、親の悪口を言い続けます。

 この種の人達の行動パターンは、あまりにもそっくりで、精神科医などからすれば、ごくごくありふれた人格障害のパターンに当てはまるのかもしれません。ですが、当の本人達は、自分の家は特別におかしい、自分の親は特別におかしいと思っているのです。

 また、親にしがみつくか、自立するか迷い続けるタイプの人は「家を出たい。」とか「家を出ようかな…。」などと、しょっちゅう口にします。そんな時、周囲は「頑張って、家を出るんだ!」「手助けするよ!」と、後押しするのですが、やはり自立することが怖くなるのか家に残るというパターンが多いです。そして、周囲も「またか…」と本気で助けようとはしなくなります。

周囲もあきれて口を出さなくなる

 このように自分の親がいかに毒親であったかを主張しつつ、親の悪口を言いながら親から離れようをしない人達は、何度「そんなに害があるなら、家から出たほうがいい。」と他人から説得されても、親から離れようとしません。

 私も、未だにこのような親離れ子離れのできていない共依存家族の話を聞くことがありますが、特に親身に動く気にはなれません。なぜなら、このような人達は上記の動画にもあるように、「被害者であり続けたい。」ように見えますし、他罰的で頑固で自分を変えようとしません。さらに、40歳になっても、50歳になっても親離れできない人達をたくさん見てきましたから、ああ、このタイプは一生「親のせい」にして死ぬタイプだと割り切るようになってしまいました。

DV夫と別れない妻と同じ

 私の正直な気持ちを言えば、このような親離れできない大人達は、DV夫と別れない妻達に似ていると思っています。「夫に殴られてつらいんです。」と顔や体にあざを作って他人に訴えている妻。誰しもが「夫の暴力は、絶対に治らないから別れた方がいいですよ。」とアドバイスすると思います。ですが、DV妻は「でも、家庭にお金は入れてくれるし…」「でも、優しい時もあるんです。」といいながら別れない。そしてまた、「夫に殴られてつらいんです。」と泣きついてくる。「なーんだ、結局、DV夫といることを自ら選ぶんじゃん…」と、周囲はあきれてしまう。「親のせいで自分は苦しんでいる。」という大人たちも、私からみれば、これと同じように見えるのです。「苦しいなら離れればいいじゃん…」と。

 上記の3つの苦しみのうち、「親にしがみつく苦しみ」を自ら選んだんでしょ?と私は思ってしまうのです。親にしがみつくのも、迷うのも、自立するのも全てつらく苦しい道のり、あとは、どの苦しみを選ぶかだけなのです。

 ただ、親に経済面、生活面を支えられている大人を助けようとする人はいませんが、孤立無援で自立しようとする人を助けようとする人はいます。他者からの支援を受け、他者からの親切や愛情を感じやすいのは「自立希望組」であることは確かです。

 私自身も18歳で親を捨て、自立しようともがいていた時期には本当に多くの人達の親切や愛情に助けられました。

 もちろん、DV妻も、親にしがみつく大人も、(生い立ち・または遺伝のためか)思考や人格に独特の癖のようなものがあるので、自立したいなら精神科や社会福祉の手助けを受けながら自立していくことが望ましいと思っています。

自立とは血縁でない人と信頼関係を築けること

 自立に関する定義について、ある学者は

血のつながっていない他人と信頼関係を築く事ができるようになること

といい、別の学者は、

依存先を複数持つことができるようになること

と言っています。

 上記のように、親にしがみつく大人達は、依存先が「親」のみなことが多いのです。つまり、他人と信頼関係を築き、助け合って生きていくということを学習、体験できていないのです。

 その責任は、確かに子供が他人と助け合う機会を与えなかった親の「丸抱え」、あるいは「支配的」な育て方に原因があるのかもしれません。

 ですが、勇気を出して一人で自立しようとしている人を助けないほど、世間は冷たくありません。一歩踏み出して、親から離れれば、違う苦しみを背負うかもしれないけれど、今までにはなかった幸福も得ることができるのに…と、実際に毒親から逃げ出した私はそう思います。

 夫婦だって、最初は赤の他人です。ですが、その赤の他人と信頼関係を築いて、かけがえのない家族という共同体を作る、それが共依存親子の子供にはできないのです。なぜなら、親子の依存関係が強固で、他者を寄せ付けさせないからです。

「親のせいで…」がアイデンティティになっている

 このような人達は若いうちに精神的自立を果たせればよいのですが、30代、40代と歳を重ねてもまだ「親のせいで自分はこうなった。」と自分に呪いをかけ続けることも少なくなくありません。

 「人生とは何か?」という問いに、日本で一番権威のある哲学者は「物語作りだ。」と答えています。人が生まれて死ぬまでの「自分物語」を作るのが、人生というものだというのが、その哲学者の「人生とは何か?」の答えでした。

 30代になっても、40代になっても、親にしがみついて、親の悪口を言っている大人達について私が思うことは、彼らは「親のせいで自分はこうなった。」が、もはや、アイデンティティになっているということです。

 昔は、こういった人達も親が死ねば変わると思っていましたが、今は、こういった人たちは、親が死んでも「親のせいで自分はこうなった。」と言い続け、自分が死ぬその瞬間まで「親のせいで自分はこうなった。」と言い続けるんだろうな、と思っています。なぜなら、彼らは「親のせいで」「親のせいで」と自分に呪いをかけ続けた結果、「親の被害者である自分」がアイデンティティになってしまっているからです。これは違う側面を切り取ると「親の支配あってこその自分」「親の支配なしには生きられない自分」「自分自身の人生が得られなかった自分」というふうに捉えることができます。

 ですから、私としては、そういった人達には「自分自身の人生を取り戻す」ために、(一時的にでも)親と別居して、生活保護でも受けて、生活面、精神面の自立から始めてほしいと思ったりもします。ですが、当の本人が親から離れようとしないのですから、他人がどうこうできる筋合いの話ではないのが現状なのです。

まとめ

 8050問題(80歳の親が50歳の子供の面倒をみる問題)が、最近よくメディアで取り上げられていますが、私の周囲だけでも、8050問題の予備軍はたくさんいます。

 小さい子供の場合、親が子供を虐待していれば児童相談所が無理やりにでも引き離します。ですが、大人になってしまった子が、親から精神的虐待を受け続けていても誰も引き離してはくれません。自分の意思で親から離れるしかないのが現実なのです。

 子を家から出さない子離れできない親、親の家から出ない親離れできない子、この問題は本当に根が深い問題なのです。

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