- 八丁味噌とは
- 八丁味噌の伝統製法と利権争い問題
- 八丁味噌カクキュー工場見学
- 八丁味噌工場見学の予約・料金
- カクキューの敷地内の見学開始
- カクキューの味噌は手作業で袋詰め
- カクキュー八丁味噌資料館
- カクキューの実際の味噌蔵
- 八丁味噌の工場見学はおみやげ付き
- 味噌パウダーの食べ方・使い方
- 敷地内にはおみやげ物屋、飲食店も
- まとめ
八丁味噌とは
八丁味噌は、愛知県岡崎市の八帖町(旧・八丁村)で江戸時代初期から作られている豆味噌のことです。八丁味噌という名前は、徳川家康公生誕の岡崎城から西に8丁(約870m)の八帖町(旧八丁村)に2つの蔵元があったことにちなんでいます。
ですから以前は、岡崎城から八丁以内で味噌づくりをしていた「カクキュー」と「まるや」しか「八丁味噌」を名乗れないとされていました。
ですが「愛知県味噌溜醤油工業協同組合」が「八丁味噌」を名乗れる地域を愛知県全土に広げるように申請をし、2022年の現在でもまだ法的に揉めている状態です。
八丁村の近くを流れる矢作川の上流は花崗岩質で、そこから流れてくる水が味噌作りには最適の水でした。八丁町は、何本もの川に挟まれた湿気の多い土地で、食べ物が腐りやすい場所でした。こんな場所でも保存が利くようにと仕込み水を極限まで少なくする、熟成期間を長くするなど、創意工夫して、独特の味噌作りをしたのが八丁味噌の由来なのです。つまり、八丁味噌は「八丁町の気候・風土」なしには八丁味噌として発展しなかった味噌なのです。
八丁味噌作りの特徴は「木桶、石積み、二夏二冬」という伝統製法で、八丁味噌2社は今もその伝統製法を忠実に受け継いでいます。また、米麴ではなく豆麹を使うのも特徴のひとつです。
創業から長い年月味噌を作り続けた蔵や木桶、土壌には、こうじ菌だけではなく、その他の味噌を美味しくする菌類が住み着いていて、それらの菌が八丁味噌独特の風味を生んでくれるのです。
八丁味噌の伝統製法と利権争い問題
八丁町に由来を持つ「カクキュー」と「まるや」が作る「八丁味噌協同組合」と、争いを起こした「愛知県味噌溜醤油工業協同組合」との「八丁味噌の作り方の定義」には大きな違いがあります。
八丁味噌協同組合(カクキュー・まるや)
- 味噌玉:握りこぶしほどの大きさ
- 熟成期間:天然醸造で2年以上
- 仕込み桶:高さ約2メートルの木桶のみ
- おもし:おもしは天然の川石に限る(約3トンを円すい状に積み上げる)
愛知県味噌溜醤油工業協同組合
- 味噌玉:直径20㎜以上、長さ50㎜以上
- 熟成期間:一夏以上熟成(温度調整を行う場合は25℃以上で最低10ヶ月)
- 仕込み桶:タンク(醸造桶)材質は問わない
- おもし:材質は問わない
このように比較してみると、老舗のカクキューとまるやの味噌作りと、愛知県味噌溜醤油工業協同組合の味噌作りは全く違い、同じ八丁味噌としてくくるには無理があると分かると思います。
ですが、現状では愛知県味噌溜醤油工業協同組合のほうが優勢で、伝統製法ではない赤味噌も八丁味噌を名乗れるようになりそうな流れです。
八丁味噌カクキュー工場見学
こちらが、カクキューの社屋です。この社屋、とてもレトロで雰囲気があって素敵ですね。実は今でもちゃんと事務所として使っていて、国の登録文化財に指定されているのだそうです。
こちらがカクキューのロゴマークです。関東圏でも八丁味噌としてデパートやスーパーで販売されていることもあり、うちの夫も「見たことがある!むしろ見たことのない人のほうが少ないんじゃない?」と言っていました。
八丁味噌工場見学の予約・料金
八丁味噌工場カクキューの見学は無料です。それどころか、帰りにお土産を持たせてくれます。
見学時間は、10時から16時までで、電話予約は受け付けていません。以下の時間の少し前に敷地内の受付に集合する必要があります。受付場所は、駐車場からカクキューの社屋に向かって右側のおみやげ物屋の中にあります。
- (平日)毎時00分出発
- (土日祝)毎時00分・30分出発 ※12:30の回はお休み
見学前にコロナ対策の検温と見学申込書の記入が必要になります。ですから、少し早めに到着しておく必要があります。また、毎時00分に1秒でも遅れたら、見学隊が出発してしまうので、2~3分でも遅れたら、1時間待ちとなりますので要注意です。
カクキューの敷地内の見学開始
私達夫婦は3連休に見学に行ったので、朝一番の10時の回でもたくさんの見学者がおり、私達を含めて6組、15人以上の見学者がいました。
見学の際は上の写真のようにカクキューのはっぴを来たスタッフがマイクとスピーカーを持って、高齢者にでも良く聞こえるように説明をしてくれます。
工場の敷地内に入ると、昔ながらの趣のある事務所が並びます。
また、味噌作りの蔵も昔のままの佇まいで存在しています。
20年前に見学に来た時には、
愛知県の「三河地区(徳川家康がいた地域)」にある岡崎城から八帖(距離の単位)離れた場所である、「八帖町」で作られた味噌だけを「八丁味噌」と呼んで良い。
だから正式には、それ以外の地域で作られた赤味噌は「八丁味噌」ではなくて、「赤味噌」と表記するのが正しい。
という説明を受けました。ですが、八丁味噌を名乗る権利の揉め事のため、現在ではその説明はなくなっていました。
20年前に見学に来た時は、大型観光バスが駐車場に2台ほど止まっており、「えっ! そんなに有名な観光スポットなの?」と思っていました。当時なぜ、カクキューがそんなに人気の観光スポットだったかというと、NHK連続ドラマ小説「純情きらり」のロケ地だったからでした。
カクキューの味噌は手作業で袋詰め
平日に見学に来れば、味噌の袋詰め作業を見ることができたようですが、見学当日は休日だったため、袋詰め用の器材のみの見学となりました。
仕込み水を極限まで少なくする、熟成期間を長くするなどの伝統的製法を守り続けているため、カクキューの味噌は固く、機械が詰まってしまうため、一般的な味噌のように機械での袋詰めができないのだそう。ですから、一つ一つ手作業で袋詰めをするしかないのだそうです。
カクキュー八丁味噌資料館
カクキューの資料館の前にはずらりと木桶が並んでいます。
この木桶は杉の木で出来たものを使わないと、味噌が良い味にならないそうです。ですが、近年はこの木桶を作る「木桶職人」さんがいなくなってきたことで杉の木桶の確保が難しくなっているそうです。現在は廃業した醤油屋さんなどから杉の木桶をゆずってもらったりして確保しているそうで、伝統製法を守るために並々ならぬ努力をなさっている様子が伝わります。
ちなみにカクキューの八丁味噌は「皇室御用達」だった時期もあり、昔見学に来た時には、秋篠宮殿下や黒田さんが見学に来られている写真も壁に掛けられていました。
資料館入ってすぐ右側には、旧国鉄岡崎駅に飾られていた角久の看板が飾られています。絵柄は日吉丸と蜂須賀小六。岡崎城から西に八丁に位置した八丁村にちなんでこの絵柄になったそうです。
こちらが、江戸時代の八丁味噌の店舗の様子です。店の正面に結界(けっかい:帳場格子)があり、その奥で番頭が大福帳を付けている場面を再現しています。
こちらが昔、味噌の豆を蒸していた大釜です。
こちらが仕込みの様子を再現したものです。先ほどの大釜で蒸した豆を粒が残る程度につぶし、握りこぶし台に丸め、豆麹をまぶしたものを「味噌玉」と呼びます。
その味噌玉を、大釜のある蔵の2階に運び発酵させます。2階の床が竹で出来ているのは、大釜の湯気が2階に上がり、2階を発酵に適した温度にさせるための創意工夫です。
そして、味噌玉が発酵すると「半切り」という大きなたらいの中でこね合わせて「六尺(仕込み桶のこと)」に何度も往復して運びます。
六尺の中には、職人がおり、足袋を履いて味噌を踏み込み、その際の水加減や踏み込み加減は店主の指導の元に行われたそうです。
こちらの樽は天保10年(1839年)に作られた、カクキューで最も古い木桶です。この大きな木桶を作るには、柱のような大きなカンナで木を削る必要があり、そのカンナもこの木桶の横に展示してありました。とにもかくにも、この杉の木の木桶を確保するのが、現代ではとても難しいそうです。
カクキューの実際の味噌蔵
こちらが実際に八丁味噌を発酵させている味噌蔵です。20年前に見学した時には味噌蔵の中を自由に歩けたのですが、コロナ禍の現在では、入り口までしか入ることができませんでした。
それでも木桶の大きさは分かりますし、味噌の香ばしい香りが蔵中にただよっていて、「わー、いい匂い!」とつい声に出してしまいました。
そして、この樽(たる)が6トンの味噌を仕込んでいる樽です。上には3トンの重し石が積んであります。人の大きさと比較すると、木桶の大きさがお分かりかと思います。
この石がタダモノではなく、天然の川石でなければならず、7~8年修行を積んだ「石積み職人」が積み上げているそうです。内側へ内側へと力がかかるように繊細に微調整しながら積んであり、物理学的に計算すると、震度5の地震が来ても、崩れないバランスで積んであるそうです。
この円すい状に積み上げたおもしには、塩分やうまみを桶全体に均一に回す役目があり、そのために特別な職人技が必要なのだそうです。こうして「二夏二冬(2年以上)」かけ、四季の自然な気温の変化にまかせ熟成させることで、塩角がとれたまろやかな味わい深い味噌が仕上がるそうです。
スーパーなどで販売されている、お手ごろ価格の味噌は木桶では作ってないでしょうし、コスト的に2年も熟成させられないでしょうから、伝統製法の八丁味噌のこだわりを感じずにはいられません。
八丁味噌の工場見学はおみやげ付き
敷地内の見学が終わると、八丁味噌の味噌汁とお土産の味噌パウダーを渡されます。20年くらい前の見学では、500gの八丁味噌をお土産にくれていたのですが、現在は味噌パウダーに変更になったようです。
八丁味噌を飲んでみた感想は、水分を少な目にし、「二夏二冬(2年間)」寝かせがだけあって、コクがすごいということ。それと同時に発酵が進んだ渋味やえぐみもありますが、それが逆に八丁味噌の香ばしいコクに合って、夫は「お酒に合うね。」と言っていました。
味噌パウダーの食べ方・使い方
お土産の味噌パウダーを自宅に帰って開けてみると、中に説明書きがあり、煮込み料理に入れるとコクが増し、ソフトクリームやアイスクリームにかけると香ばしいキャラメル味になると書かれていました。ぜひ試してみようと思います。
敷地内にはおみやげ物屋、飲食店も
カクキューの敷地内にはおみやげ物屋、飲食店などもあります。おみやげ物屋には味噌だけでなく、味噌煮込みうどんキットや、味噌をアレンジした商品もたくさん並んでいました。
私達夫婦が名古屋で行った有名洋菓子店「堂島ロール」のモンシェールとのコラボラスクなども販売されていました。もちろん味噌味のラスクも入っています。
また飲食店では、味噌煮込みうどん、味噌カツなど以外にも味噌パウダーをかけた「味噌ソフトクリーム」が販売されており、この「味噌ソフトクリーム」が人気を博していました。
まとめ
八丁町の気候・風土が生んだ「八丁味噌」。以前はカクキュー・まるやのみが使って良い名前でしたが、利権争いで、伝統製法とは異なる製法の味噌まで「八丁味噌」と呼ばれる危機が訪れているようです。
現代でも伝統製法を必死に守っている「カクキュー」の努力を目の当たりにして、現在行われている係争が、「カクキュー」や「まるや」に有利に動くよう、個人的には望んでしまうの工場見学の旅でした。
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