歯茎年齢が10歳老けている知人
私の50代の知人で歯茎が尋常ではなく下がっている人がいます。本人曰く、歯科医に「歯茎年齢が実年齢の10歳上くらい上ですね。」と言われたそうです。では、この知人は歯のケアをサボっていたのでしょうか?実はそうではありません。この知人は、歯の健康を気にして、1日に3回、食後に歯磨きをしていたそうです。
では、なぜ、この知人の歯茎はそんなに下がってしまったのでしょうか?私のかかりつけの歯科医で習った歯のケア方法を交えながら、解説していきたいと思います。
歯肉退縮(しにくたいしゅく)とは
「歯肉退縮(しにくたいしゅく)」とは、歯を支えている歯茎が何らかの理由で下がる現象です。「歯肉退縮」は老けて見えるだけでなく、歯やその周囲に様々な悪影響を及ぼします。
ここでは歯茎が下がる歯肉退縮の原因や症状、治療法をわかりやすく解説したいと思います。
歯肉退縮の原因と対策
歯肉退縮の原因は以下の通りです。原因と同時に解決策も記載しておくので参考にしてください。歯茎が下がると、最悪の場合、歯が抜け落ち取り返しのつかないことになります。
加齢
後期高齢者になると、歯茎が極端に下がっている方を見かけることも少なくありません。歯茎は他の組織や器官と同様に年を重ねるごとに退化したり、委縮したりします。体の全てに言えることですが、老化による退化は防ぐことはできませんが、適切なケアによって遅らせることはできます。
適切なケアとは、「正しい歯磨き」です。「正しい歯磨き」とは、適切な圧で、適切な角度で、適切な磨き方で歯を磨き、最後にフロスで歯間を掃除することです。
不十分な歯磨き
上記の知人のように1日に3回歯磨きをしていても、その歯磨きの方法が間違っていては、歯や歯茎の健康は守られません。歯磨きの角度や磨き方が間違っていると、歯の表面や歯ぐきとの境目に歯垢や歯石などの汚れが残ります。それらが細菌の温床となり、歯周病などの原因になります。
解決策は、上記の通り「正しい歯磨き」を毎日行うことです。
歯周病
歯肉退縮の主な原因は歯周病だと言われています。歯周病とは、歯茎に細菌感染が起こり、炎症反応が生じる病気です。現在、日本人成人の約8割がかかっているとも言われており、正しい歯磨きができずに、歯垢や歯石がたまることが原因とされています。
歯周病が発症すると、歯ぐきの破壊が起こり、歯肉が下がっていきます。歯周病の炎症によって出てくる毒性物質は歯肉の血管から全身に入り、血糖値を下げるインスリンの働きを悪くさせたり(糖尿病)、早産・低体重児出産・肥満・血管の動脈硬化(心筋梗塞・脳梗塞)にも関与します。
こちらも、解決策は「正しい歯磨き」や「歯科での定期的なクリーニング」で、歯垢や歯石を貯めないこととなります。
ブラッシングの圧が強すぎる
毎日一所懸命に歯磨きしていても、ブラッシング圧が強すぎると、歯ぐきを傷めてしまいます。同時に歯の表面を覆っているエナメル質を傷つけることにもなります。私自身も、かかりつけの歯科医で歯磨き指導を受けていた時、力を入れて歯や歯茎をこすりすぎて、歯茎に炎症を起こさせてしまいました。
歯を磨くときのブラッシング圧は30~40gだと言われています。ブラッシングの適正な圧を知りたい場合は、キッチンスケールなどに歯ブラシを押し当てて、30~40gの圧とはどれくらいか、試してみてください。
このように、圧を計ってみればお分かりだと思いますが、歯磨きの正しいブラッシングの圧は、歯をなでるような弱さです。逆に、すぐに歯ブラシの先が広がってしまうような強い圧で磨いていると、知らず知らずのうちに歯茎が炎症を起こしてしまい、歯茎下がりの原因となってしまいます。
これは私の推測ですが、上記の知人は、この歯磨きの圧力が強すぎな状態で1日に3回も歯磨きをしていたため、歯茎下がりが進行してしまったのではないかと思います。古い人間は、歯磨きをする際に、強くこすればこするほど汚れがしっかり落ちると勘違いしがちです。ですが、実際には歯磨きの圧が強いと歯茎が炎症を起こし、歯茎下がりの原因になってしまうので、歯磨きの際の圧には注意が必要です。
元から骨、歯茎が薄い
こちらは遺伝的なことなので致し方ないことですが、もともと歯ぐきや顎の骨が薄い人は、歯肉退縮が起こりやすい傾向にあります。このようなタイプの人は、歯茎にちょっとした刺激が加わることで下がってしまいやすいので、上記のようにブラッシングの際に、歯や歯肉に圧を加えすぎないように気をつけましょう。
歯並びやかみ合わせが悪い
歯並びや嚙み合わせに問題があると、特定の歯や歯茎に過剰な負担がかかります。そういった場合にも歯茎に炎症反応が生じ、歯茎が徐々に下がっていってしまいます。
この場合の解決策は、歯列矯正で歯並びを良くしたり、マウスピースを装着して寝るなどして、歯への負担を減らすこととなります。
矯正治療の影響
上記の通り、歯並びの悪さも歯肉退縮の原因になりますが、歯並びをきれいにする矯正治療においても歯肉退縮のリスクがあります。適切な矯正力を働かせている場合は歯肉が退縮することはないのですが、装置に不具合が生じて過剰な力が歯茎に加わると歯茎が下がる原因となってしまいます。そのようなことにならないためには、装置を定期的に正しい矯正力に調整することが重要です。
詰め物や被せ物が合っていない
虫歯治療の後に装着した詰め物・被せ物が合っていない場合も歯肉退縮が起こりやすくなります。例えば、被せ物が高すぎた場合、噛んだ時の力がその歯に集中し、歯ぐきがダメージを受けやすくなります。あるいは、被せ物が深く、歯ぐきに当たる場合にも歯肉退縮が起こりやすくなります。
私も、虫歯の治療で深い被せ物をした箇所があり、その被せ物は歯肉と接触していますが、その部分だけ、いつも歯垢が残りがちです。例え、被せ物のサイズが合っていたとしても被せ物をした箇所は汚れがきれいに落ちにくいので、タフトブラシやフロスなどでピンポイントで磨く習慣をつけたいものです。
爪を噛む癖がある
爪を噛むクセがある場合、歯茎に大きな負担がかかります。爪は意外と硬い物質なので、習慣的に爪を噛むと、歯茎に負担がかかり、歯茎下がりの原因となってしまいます。爪を噛むクセがある場合は、マナー的にも問題ですし、歯茎にもとても悪いので、早めに治した方が良いでしょう。
タバコ
タバコの煙に含まれる一酸化炭素やニコチンは、歯ぐきの血流を悪くし、歯周病のリスクを高めます。また、歯茎の慢性的な栄養不足・酸素不をもたらし、歯茎自体が委縮し、歯肉退縮のスピードを早めます。
タバコは「百害あって一利なし。」と言われるくらい、あらゆる病気の温床となっているので、可能な限り、減煙、禁煙を目指したいものです。
歯ぎしり・食いしばり
歯ぎしりや食いしばりなどの習癖があると、歯と歯茎に過剰な負担がかかります。そうすると、歯に亀裂が入ったり歯が割れたりしてしまいます。さらには、歯ぎしりや食いしばりは、歯ぐきに炎症をもたらし歯茎下がりを早めます。歯ぎしりによってかかる力は、100kgを超えることも珍しくないと言われています。
こちらが、歯ぎしりのクセのある夫のマウスピースです。歯ぎしりの圧が強すぎて、マウスピースが削れて、ところどころ穴が空いているのがお分かりだと思います。
当初、夫は自分に歯ぎしり癖があると気付いていませんでした。ですが、歯科で「八重歯が削れていると、歯ぎしりのクセがある可能性が高い。」と指摘され、マウスピースを作りました。すると、あまりの歯ぎしりの強さに、マウスピースが1年もつかもたないかの勢いで削れていくということが判明しました。もしも、夫が歯ぎしり癖に気付かず、歯ぎしりで自分の歯を削り続けていたら…と思うとゾっとします。
自分自身で自分の歯ぎしりや食いしばり癖に気付いていなくても、マウスピースを付けてみると、意外と歯ぎしり癖が見つかるかもしれません。歯科では、歯のかたどりをして自分の歯にぴったりのマウスピースを作ることができるのでおすすめです。我が家のかかりつけの歯科では5000円でマウスピースをオーダーメイドできました。
ホルモンバランス
歯肉退縮の原因として、ホルモンバランスの乱れが挙げられることもあります。その中でも、妊娠性歯肉炎は有名です。妊娠期は女性ホルモンのバランスが崩れ、唾液の分泌量が減るため、歯周病菌の活動が活発化します。その結果、歯ぐきに炎症が起こって歯肉が下がる場合があります。
歯肉退縮の症状
歯茎が下がると、様々な症状があらわれ、最終的には歯が抜け落ちてしまいます。
知覚過敏
健康な歯は歯の根っこが歯ぐきに覆われており、冷たいものや熱いものがしみることはありません。ですが歯肉退縮によって歯の根の部分が露出すると、外からの刺激を受けやすい象牙質までむき出しになります。そのため、冷たいものや熱いものが歯にしみるようになります。これが歯茎下がりの初期症状、知覚過敏です。
食べものが挟まりやすくなる
歯と歯の間に食べ物が挟まりやすくなった場合は、歯肉退縮が疑われます。歯ぐきが下がることによって歯間距離が開き、食べ物が詰まりやすくなっているのです。
歯が長く見える
健康な口内は歯と歯ぐきのバランスが良く、見た目も若々しく見えます。ですが歯茎が下がることによって、歯が長くなったように見え、見た目も老けて見え始めます。歯が長くなったように見え始めたら、歯や歯茎の危険信号なので、そうならないためにも、定期的な歯科での検診やクリーニングを行ないましょう。
虫歯になりやすくなる
歯肉退縮が進行すると、歯と歯の間に食べ物が挟まりやすくなり、歯垢や歯石の沈着も目立つようになります。その結果、虫歯のリスクも上昇します。
歯周病ポケットが4㎜以上に深くなっているケースでは、歯が抜け落ちるリスクも上昇します。また歯周ポケットが深くなると、歯周病からくる毒性物質が血管に乗って全身に回り、様々な疾病の原因になるため要注意です。
歯がぐらぐらする
歯肉退縮も末期の段階になると、歯がぐらぐらするようになります。歯がぐらぐらするということは、歯周ポケットもかなり深くなっており、歯茎だけではなく、歯を支えている歯槽骨という骨まで破壊されていることを意味します。その場合、治療が遅れると抜歯せざるを得えなくなります。そのような段階に進まないためにも、定期的な歯科検診で自分の歯の状態を知っておくことが大切です。
歯が削れたり割れたりする
歯茎には歯を守る役割があります。そんな歯茎が下がると、歯根の部分の象牙質が露出して、歯が削れたり、割れたりすることがあります。歯槽骨まで破壊が進むと、歯根そのものが折れる可能性も出てきます。
歯が抜ける
歯肉退縮の症状が進行して、顎の骨まで歯周病が進行すると、いよいよ歯が抜け落ちます。日本人が歯を失う原因第1位が歯周病であるのはそのためです。歯周病になると、歯ぐきと顎の骨が破壊され、歯を支えきれなくなるのです。
正しい歯磨きを身に着けるには
歯科の定期健診で、「年齢にしては歯茎がしっかり残っているほうですね。」と言われた私。良い歯科医に巡り合ったことで、歯磨きの仕方をしっかりと教えてもらい、「正しい歯磨き」を身に着けることができました。
「正しい歯磨き方法」については、後日、別記事にしたいと思いますが、一番大切なのは、歯を磨く際の「圧」です。上記の通り、歯磨きの際の正しいブラッシング圧は30~40gで、「え!こんなに軽くタッチするだけでいいの?」という軽さです。それ以上に強くこすると、歯肉に傷を付けてしまい炎症の発生、しいては歯茎下がりの原因になってしまいます。
さらに、歯を磨く時間ですが、手磨きなら5分は磨いてくださいと歯科医から指示がありました。こちらもブラッシング圧をキッチンスケールで測ったと同様に、キッチンタイマーで5分を計ってみてください。意外と長いと感じると思います。我が家では夫が「5分磨いた。」と言い張るけれど、どう考えても5分はたっていませんでした。ですから、私が夫の歯磨きの長さをキッチンタイマーで測ったら、夫の歯磨き時間は2分程度でした。ですが、夫の体感としては2分でも5分に感じていたのです。
まとめ
年齢を重ねてくると、自分の歯で食べられること、自分の口で話せること、自分の足で歩けることが重要だと言われています。50歳を過ぎると様々な箇所に不調が出てきますが、老化を止めることはできなくても自助努力で老化を遅らせることはできます。
歯についても、老後の健康状態を左右することなので、最新設備と最新技術を持った歯科医を探して、徹底して検査してもらい、徹底してメンテナンスしてもらいましょう。
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