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50代、精神疾患持ちのシニア主婦ブログ。

フィギュア*羽生選手の地獄と希望

2014年11月08日に羽生選手が退会で怪我をした日に書いたものです。

 

■大事故にも関わらず出場した羽生君

フィギアスケートの羽生君とエンカン選手が競技前の6分間練習で激突し、大怪我をしたにも関わらず出場を決意し、激痛の中、ボロボロの演技をを見せ、皆の感動を呼びました。その激しい大怪我で混乱する大会の中、他の選手達も大きな精神的な打撃を受けて、また、ボロボロの演技をしました。美しいこと、技能が高いことが要求されるフィギアスケートにおいて、全員が全員、あんなボロボロな演技をしても、人々の心を動かすことができるなんて、人間の力とはミラクルだと思いました。いえ、みんながみんなボロボロの演技をしたからこそ、皆、心から感動したのでしょう。


■フィギア激突と男と女

 大怪我をした羽生くんは血を流しながら、包帯をしながら、多くの人が棄権してほしいと望んでいる中、出場を決意しました。これを見て感動しながらも、はたして女子選手だったら出場を選んだだろうか?と考えました。「大怪我をした状態で演技などしようものなら、大きな失敗をし、選手生命すら絶たれるかもしれない」と監督や周囲の人たちに説得されたら、女子選手たちなら棄権したかもしれないと考えました。
 私は女です。だからエンコウ選手にも羽生選手にも棄権してほしかった。まともな演技ができるわけがないし、怪我で体もまともに機能せず、激しい痛みをともなっているはずだから、壊滅的な大怪我をして再起不能になるのではないか?死ぬのではないか?と心配したからです。ですが、「男と女では超えられない壁がある」と私は最近よく思うのです。

女は計算や打算で引き下がれても、男は純粋にまっすぐに走ってゆくのです。それを女は止められない。その先に、深く大きく傷つく出来事が待っていたとしても、大怪我が待っていたとしても、死が待っていたとしても、男は行ってしまうのです。女は、夫や息子や恋人の向かう先が、あまりにも無謀で、その先に死が待っていたとしても黙って見送らなければいけない時があるのだと、最近はくちびるを噛み締めています。そんな思いを持っているさなかに、羽生君のあの選択と演技を見て、やはり、そうなのだと涙が出ました。


■羽生君の背負っているもの

 羽生選手は、家計的に出来合いの上等の衣装を買うだけの余裕がなかったのでしょう。お母さんがスパンコールを縫い付けてくれた、明らかに他の選手と比べると見劣りのする衣装を着て頑張っていました。最初の頃は体格的にも見劣りする選手で「こんなに華奢で大丈夫なんだろうか?」とすら思いました。そして、彼は東日本大震災で被災をしました。経済的にも、精神的にも、状況的にもとてもスケートを続けられる状態ではなかったと思います。十代半ばの少年にはあまりにも過酷で乗り越えられないかもしれないと思っていました。
 ですが、いろんな人がお金を工面してくれたり、フィギアを続けられるよう手配をしてくれたのでしょう。フィギュアを続けることができたのです。その頃は、お世話になった人たちに恩返しをしたいと頑張っていました。ですが、羽生君が被災したスケーターとして、「日本のためにがんばれ!」「被災地の人のためにがんばれ!」と、いつの間にか「日本を背負って戦え!」と、被災地のヒーローに祭り上げられてしまいました。これは、いくらなんでも、15.6歳の少年には重すぎます。そんな重いものを15.6歳の少年に背負わせるなんて、「日本の大人は馬鹿なのか?」と腹をたてていました。
 そして、羽生君自信も、日本のために、お世話になった人のためにとプレッシャーを感じすぎて、どんどん成績を落としてゆきました。私は、羽生君をそこまで追い詰めた大人たちに腹がたっていました。このまま羽生くんはつぶれていくのか?もしそうなったら、全部、羽生君をヒーローにまつりあげた大人のせいだ!!と思っていました。
 ですが、大人も馬鹿じゃなかった。「日本のためにも、東北のためにもがんばらなくていい。自分のために頑張りなさい。自分の好きなスケートを楽しみなさい。」と言ってくれる大人が出てきたんですね。そして羽生君も、東北のためでもなく日本のためでもなく、「自分のスケートを楽しむんだ。」と、乗り越えたのです。17.8歳の少年がです。そして、今日の演技。涙が止まりませんでした。


■採点基準を超えた採点。ひいきか?ひいきでないか?

羽生選手は、「1位を取ることは通過点でしかなく、スケートを通して伝えたいことがある。」と松岡修三さんに話したそう。そして、今回、どんな困難にも挑んでゆく姿を伝えた。そしてそれが審査員にも伝わり、本当は失敗している2つの4回転ジャンプが(着地には失敗したが4回転しているからと)成功したとみなされ(解説の方の意見)、2位につけた。ほかの選手から「ひいきだ!」という声が挙がったか、挙がらなかったはわからないが、あれだけのものを見せつけられたら、そんなことを思う余地すらなかったかもしれない。

若いエネルギーは、なんて無謀でうつくしいのだろうかと。そして、「この子が打ち所が悪くて半身不随になっても、死んだとしてもリンクに立たせてやらなければ。」と覚悟し、送り出した大人たちも、どんな思いだっただろうかと。最悪の事態になった際に、責任を問われ追及され、自分の地位や収入を失うことまで視野にいれて送り出したかもしれない。人は美しい。着飾った姿よりも、ボロボロになっても、なお食い下がる姿のほうが、はるかに美しい。


■でも、やっぱり私は女

でも、やっぱり、ドクターストップの制度や1回の6分間練習の人数を減らす仕組みを作ってほしいと思う。そんなことしたら、あんなドラマは生まれないだろうけど、ドラマのために命を落としたり、選手生命が断たれるくらいなら誰かが強引に止めてほしいと思うのは私が女だから?それとも年寄りだから?