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50代、精神疾患持ちのシニア主婦ブログ。

パンツを脱がなかった米兵*米兵とのつかの間の恋

 

バーでの出会い

 とあるバーで一人飲みしていた時、一人の米兵と目が合った。普段、夜遊びをしていても、米兵の体育会系の飲み方と女の子にガツガツした感じには閉口していたので、私自身は米兵の若い男の子たちと話すことすらなかった。だけれども、その米兵は、何か、雰囲気が違った。物腰が落ち着いていて、品があった。

 私が住んでいた街の、近くでもなく、遠くでもなくという距離に米軍基地があった。おそらくマリーン(海兵隊)が中心の基地だったのではないかと思う。昔のアメリカ映画などでは、不良のティーン達に対して「刑務所に入るか、海兵隊に入るか。」というような皮肉が言われたくらいに、海兵隊は荒くれ者の集まりというイメージがあった。

 マリーンでもネイビーでも高い地位や役職に付いている人間は、賢く品良くふるまうのだと思う。けれど、街に繰り出して日本人の女の子たちを簡単にナンパできる男の子たちは、何の責任も、守るべき立場もない下っ端たちだったんだろうな、と、今となっては思う。

ナンパ目的で街に繰り出す海兵隊員たち

 クラブで踊りたいだけなら、週末に基地内でダンスパーティーも開催されているから、そこで踊ればいいはず。わざわざ日本人の歓楽街に出てくる必要はないし、まあ、だいたいが日本人やフィリピン人の女の子をナンパする目的の子が街に出てきていたのは間違いない。

 ただ、今考えれば、あのガタイのいい18,19あたりの男の子たちが、もしかしたら、その後の中東や、アフガンの戦争に行ったかもしれないって考えると、もっと、優しくしておけば良かったって、後になって思った。少しだけ。

  軍隊の訓練なんて厳しくて辛いものなのだろうから、せめて、週末に「女」という救いくらいないと、つらくて仕方なかったんだろなって、今の私だと、ちょっと感慨深い気持ちになるけど、あの頃の私は、若い米兵のことは「女に飢えた男の子たち」っていうふうにしか、見ることができなかった。

目が合った一人の米兵

  そんな時、目があった米兵の男の子。10人くらいの米兵が一気に店になだれこんできて、軍人だからみんな角刈りでマッチョで胸板が厚くてと、同じ風貌をしているんだけれども、なにか、こう、一人、雰囲気が違っている男の子がいた。なんとなく、彼に見とれていると、彼と目が合った。なんとなく、照れくさくて、私は、「HI。」と落ち着いた口調で微笑みながら挨拶をした。そうしたら、彼も、とても落ち着いた口調で「HI。」と返してくれた。 

 夜遊びに出てくる男の子たちとはチョット雰囲気の違う彼に、私は

「あなた、見ない顔だけど、この辺にあんまり遊びにこないでしょ?」

と言うと、

「ボクは基地内で音楽のフリーペーパーを書いていて、この店が面白い音楽バーって聞いて、取材がてら来てみたんだ。」と言うの。

 ああ、文化の香りのする軍人ってすてきー。ってちょっと気持ちが浮足立った。どんな話をしたかは忘れたけど、私がキャロル・キングやアレサ・フランクリンが好きだっていう話をしたような気がする。「あなたのお母さんの世代の音楽かしら。」とふざけて、笑ったりして。とても、素直で可愛い男の子だった。純朴で。

「あなたは本当にかわいいBOYね。」って冷やかすと、

「I am a man.(俺は一人前の男だ!)」って、

ムキになって言い返してくるところも可愛かった。

 久しぶりに男性と話して楽しいって思った時間だったんだろうな。たまに思い出すんだよね。彼の素朴な雰囲気を。私は男遊びしてるふうに見られやすかったんだけども、実際には「男は面倒くさい」派。

振り切って帰ろうとしたものの

 だから、「ありがとう、楽しかった。帰るわ。」と、店の扉を開けて外に出たら、彼が私の後を追って、店から飛び出してきた。正直、これも、よくあることだった。私は、いくら夜遊びとはいえ、話す相手は吟味してしゃべっていたから、私を追いかけて店を飛び出してくるような男性には「私は一人が好きなの。だから一人で帰る。」と言えば、だいたい、諦めてくれた。

 だけども、彼に関してはあっさり「ついてくんな。」って言えなくて、まあ、大通りまでは一緒に行こっかな…とか思っちゃった。たあいもないことを喋りながら、大通りに出て、タクシーを拾って「See you.」と別れの挨拶を告げると、彼は一瞬、ためらったけれども、体全体で私をタクシーの奥側に押し込みながら、強引にタクシーに乗り込んできた。いつもの私だったら「迷惑だから、降りて。」と言ったのだろうけど、何となく、どうでもよくなった。

 タクシーの運転手さんも、夜の街のいざこざには慣れたもので、なかば強引に雪崩れ込んで乗ってきた白人男性を載せたまま発車していいのか、ためらったのだろう。「いいですか?閉めて。」と色んな意味を込めて、聞いてくれた。私が強引な男を断れないタイプだったなら助けてくれようとしたのかもしれない。「はい。出してください。」と、私は言った。

 彼が、頻繁に女の子に声をかけているタイプにはどうしても思えなかった。最初にしゃべった時から照れくさそうで、とてもシャイな印象をうけていたし、タクシーの中でも終始、てれくさそうにして、黙っていた。私も、だまって、反対側の窓の外を見ていた。

アパートで二人きり

 タクシーが私の家に到着し、私が家の鍵を開け家に入ると、彼は私のあとについて、私の家に上がってきた。彼はアメリカ人だから、家に入るとき靴をぬぐ習慣がないので、靴のまま家に上がろうとした。「あ、靴ぬいでね。」と、私が言うと「あ、あ、ごめん!!」と、うろたえていて、その姿がとてもかわいかったのを覚えている。 

 会ったその日に男を家に連れて帰るような人ではなかった私だが、なんか、もう、人生に疲れていて、どうでもよくなっていたとか、その男の子がシャイでカワイすぎたとか、色んな要素が重なって、あー、もー、どうにでもなってしまえーーー、みたいなヤケクソな気持ちだった。意外と、これで恋に落ちて、しばらくスパイシーな気分が楽しめるかも…とか、雑な期待もなくはなかった。

「私は寝るから、あなたも適当にくつろいで。」と、ドライに突き放すと、彼は服を脱ぎながら私にからみついてきた。軍人だから、鍛え上げられた肉体は、さすがに美しかった。しばし、からみ合ったけど、彼はパンツを脱がなかった。

思いやりなのか軍の教育なのか…

 私がなんとなく、投げやりで「どーでもいいやー」くらいの、軽はずみな気持ちで、彼を家に上げたってことを彼は感じ取っていて、もっと気持ちが入ってくるまで時間や日数を重ねようと思ってくれたのかもしれない。 

 あるいは、「米軍が日本人女性をレイプした、しない。で揉めることが多かった時期」だったから、軍から日本人の女と仲良くなってもパンツは脱ぐなと教育されていたのかもしれない。ただ、そんなふうに、私を大切に思ってくれる気持ちが痛かったし、重かった。その場から逃げ出したいくらいに。若い男の子を、ちょっとだけ、弄んだ感じになっちゃったのかな?って。

 そのまま、何事もなく、彼は朝まで私の家で眠り、朝起きたら恥ずかしそうにしていたので、「駅まで送るよ。」と彼を駅まで送って、基地方面に向かう電車に乗せた。彼は、とても恥ずかしそうにしていて、あまり、私の顔を見なかった。私も、違う意味で恥ずかしくて彼の顔を見ることができなかった。いい年をした女が、若い男を家に連れ込んだあげくに、一方的に気を使われるとか、あたしってバカじゃないの?と。私は30代で、彼は24、5歳だった。

翌週のバーで

 次の週、私の夜遊びスポットに彼が来ていないことを願っていたが、彼は来ていた。そして、キョロキョロしていた。「あ、来てるのか…」私は、彼の姿を見るなり、彼に見つからないように、そっと、その店を出た。そして、「今日は夜遊びは中止。」と家に帰った。

 洋服を脱いだにもかかわらず、パンツも脱がずに頑張った24,5歳の軍人の男の子に対して、私にできる一番、誠実な行動は、もう二度と彼の前に姿を表さないということだった。あれから、彼が戦争に行っていないであろうことを祈った、なつかしい思い出。

出逢いと思いと欲情と

 この年になると、抱いてほしいのに抱いてもらえなかった、ギリギリのところでどちらかが踏みとどまったという経験をいくつか抱えることになる。このマリーンの男の子も、私に対して抱きたいのに抱けないという感情を持ってしまったのかもしれない。彼に彼女がいたのか、私が純粋に見えて手を出してはいけないとおもったのか、それは私には分からない。

 そんなに私のことを大切に思わないで。軽い気持ちで抱いてくれればいいのに…と思ったところで、誠実な男性はそうはしてくれない。お互いに好きだという気持ちを伝えあったのに、抱いてはもらえなかった。女にもそんなさみしさはあるものなのよね。

 「なぜ、彼は一歩踏み出してくれなかったのだろうか?」という思いが頭の中にいっぱいになって泣いてしまうことだってあった。そしてそんな時に私はいつも、「きっと、人としての徳が違ったんだ…」と感じるようになってしまった。

 ルパン三世のカリオストロの城という映画があるが、あの映画でルパンはクラリスを振ってしまう。あの感じで私も振られらのだろうと、私が未熟すぎて、振られたのだろうと切なくなってしまったりしてね。

 とある恋で、私はどうにもならない気持ちをいさめるために、思いを寄せた男性に「握手をしてください」とお願いをしたことがある。そして、彼は長い長い握手をしてくれた。私はそれで、気持ちをおさめるしかなかった。私は彼に「あなたのことが好きなんだと思う。」と伝え、彼も私に「あなたに対して、強い思いがある。」と告白しあった仲だった。それでも、結ばれない縁というものがこの世には存在するのよね。

命短し恋せよ乙女

 アラフィフになっても覚えているような、そんな情緒的な恋をできたことは、豊かな人生だったのかもしれない。空を眺め、彼らと同じ空の下に生きていることをかみしめながら、私はせわしない日常の洗濯物を干し始める。

おわり

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